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大阪で民泊を始めるには|特区民泊の受付終了後の旅館業法と新基準

「大阪で民泊を始めたい」とお考えの方に、先にお伝えしなければならないことが2つあります。

1つは、特区民泊はもう選べないということです。大阪市は2026年5月29日をもって新規受付を終了しました。

もう1つは、代わりの選択肢である旅館業法も、2026年10月30日から基準が変わったということです。大阪市が条例を改正しました。

この記事では、何がどう変わったのかを、内閣府と大阪市の資料だけを使って整理します。平均稼働率89%・630室の運営を通じて見てきた実務の観点も添えます。

先に結論

  • 特区民泊は2026年5月29日で新規受付が終了。認定施設の94.8%が大阪市にあった制度です
  • 残る選択肢は住宅宿泊事業法(年180日まで)と旅館業法(上限なし)の2つ
  • その旅館業の条例が2026年10月30日から改正。変わったのは3点です
  • 人が住んでいる建物の中でやるなら、鉄筋コンクリート造か鉄骨鉄筋コンクリート造に限られます
  • 宿泊者がいる間は、施設に人が常駐しなければなりません
  • 近隣への事前周知の対象が、総客室33平方メートル未満から200平方メートル未満へ広がりました
  • 経過措置があります。施行日より前に申請を済ませた分は、従前の基準で審査されます

特区民泊は2026年5月29日に受付が終わりました

大阪市の公表資料にこうあります。

特区民泊については、令和8年5月29日をもって、新規受付および居室の追加・床面積の増加に関する変更手続の受付を終了しました

出典:特区民泊の申請について(大阪市)

終了したのは新規の受付と、居室の追加・床面積の増加に関する変更手続です。

これがどれだけ大きいことなのかは、内閣府の実績を見ると分かります。

区域 認定施設 居室 新規受付
大阪市 10,132 29,730 令和8年5月29日 終了
大阪府 54 86 令和8年5月29日 終了(貝塚市・泉佐野市・河内長野市・羽曳野市を除く)
八尾市 7 8 令和7年11月28日 終了
東京都大田区 481 1,086 終了の記載なし
千葉市 / 新潟市 / 北九州市 / 吉備中央町 2 / 3 / 3 / 1 2 / 3 / 5 / 1 終了の記載なし
合計 10,683 30,921

出典:国家戦略特区 特区民泊の実績(内閣府)(令和8年6月30日時点・令和8年9月17日更新)

全国10,683施設のうち10,132、94.8%が大阪市にあります。特区民泊は実質的に大阪市の制度でした。その入口が閉じたということです。

残る選択肢は2つです

大阪市内の物件で宿泊料を受けて人を宿泊させるなら、住宅宿泊事業法の届出か旅館業法の許可のどちらかになります。

住宅宿泊事業法は年間180日が上限です。大阪市は住宅宿泊事業法第18条にもとづく条例を定めており、実施区域と期間の制限があります。物件の所在地によって使えない場合があるので、先に確認が必要です。

通年で営業したいなら旅館業法です。上限はありません。ただし構造設備基準があり、その基準が今回変わりました。

大阪市は「旅館業法に移る」ことを前提に条例を変えました

ここは推測ではありません。大阪市自身が改正の理由として書いています。

大阪市国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業(以下「特区民泊」という。)の新規受付を終了する令和8年5月29日(金曜日)以降、民泊事業を行うことを検討している事業者が旅館業法に基づく許可を取得し、特区民泊と同様の事業を行っていくことが想定されることから、騒音やごみ等に関する近隣住民とのトラブル発生の未然防止を目的として条例を一部改正することで、より安全で安心な生活環境の確保を図ります。

出典:「大阪市旅館業法の施行等に関する条例の一部改正(案)」についてパブリック・コメントを実施します(大阪市)(2026年5月15日)

特区民泊の受け皿として旅館業が使われることを、市は想定済みです。そのうえで基準を上げました。だから「特区民泊が無理なら旅館業で」と単純に置き換えることはできません。

改正条例は令和8年10月2日に公布され、令和8年10月30日から施行されています。

出典:大阪市旅館業法の施行等に関する条例の一部を改正する条例(大阪市)

2026年10月30日から変わった3点

① 人が住んでいる建物なら、鉄筋コンクリート造か鉄骨鉄筋コンクリート造に限られます

条例第3条に第12号が新設されました。

法第3条第1項の許可の申請を行う時又は延べ面積の増加を伴う施設の改修を行う時において、宿泊施設が存する建物に現に居住の用に供している部分が存する場合にあっては、当該建物の構造は鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリート造であること。ただし、当該建物が鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリート造と同等以上の防音性能を有するものであると市長が認めるときは、この限りでない。

読み方を分けます。かかるのは「宿泊施設が存する建物に、現に居住の用に供している部分が存する場合」です。

  • 人が住んでいる賃貸アパートやマンションの一部を宿泊施設にする場合は対象になります。木造や鉄骨造の共同住宅では、原則として許可が取れません
  • 居住している人がいない建物を1棟まるごと宿泊施設にする場合は、この号の対象外です。木造の戸建てを全室宿泊用にするケースなどが当たります

「木造は一律で不可」ではありません。判断の分かれ目は構造の種類ではなく、同じ建物に住んでいる人がいるかどうかです。ここを取り違えると、検討の方向を間違えます。

例外も用意されています。「鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリート造と同等以上の防音性能」を市長が認める場合です。その具体的な要件は要綱の改正案で示されており、次の2通りです。

  • 試験検査機関の遮音測定及び音響測定結果等により、同等以上の防音性能を有する構造であることを証明できる場合
  • 建築基準法上「ホテル又は旅館」の用途に適合していることを検査済証等により証明できる場合

出典:「大阪市旅館業規制指導要綱」の一部改正(案)について(大阪市)

2つ目が実務上は大きいです。建築基準法の用途が「ホテル又は旅館」になっていれば、構造を問わず通せます。逆に言えば、用途変更をしないまま共同住宅の一室で進めようとすると、遮音測定で証明するしかなくなります。

② 宿泊者がいる間は、施設に人が常駐しなければなりません

条例第9条(衛生措置の基準)に第12号が新設されました。

宿泊者が宿泊施設(下宿営業に係るものを除く。)を使用している間、営業者又はその代理人、使用人その他の従業者が当該宿泊施設に係る旅館業の施設に常駐すること

これは運営のかたちそのものに影響します。スマートロックで鍵を渡し、連絡は電話とメッセージで、人は現地にいない——という無人運営は、この号を満たしません。

要綱の改正案では、その理由も示されています。緊急時対応と近隣住民からの苦情対応については、宿泊者の滞在の有無にかかわらず、24時間対応できる体制が求められるとされています。

特区民泊で無人運営をしていた感覚のまま旅館業に移ると、ここで止まります。人を置けるかどうかが、収支の前提を変えます。

③ 近隣への事前周知が、33平方メートル未満から200平方メートル未満へ広がりました

条例第12条(小規模な施設において旅館業を営もうとする者等が講ずべき措置)の対象が変わりました。

  • 改正前:総客室の延べ面積が33平方メートル未満である施設
  • 改正後:総客室の延べ面積が200平方メートル未満である施設

6倍の拡大です。民泊として使われる規模の施設は、ほとんどがこの範囲に入ります。許可の申請をしようとするときは、あらかじめ定められた事項を近隣住民に周知し、周知の方法などを記載した書面を市長に提出しなければなりません。

周知する事項にも2つ追加されました。

  • 騒音を防止するための方法
  • 火災等の緊急事態が発生した場合の対応方法

近隣説明は申請の前に済ませておく必要があります。後から気づくと、申請そのものが遅れます。

簡易宿所営業にも、同じ構造の要件がかかります

ここは見落とされやすい点です。新設された第12号は、条文上は第3条(旅館・ホテル営業の施設の構造設備の基準)に置かれています。

民泊からの転換では簡易宿所営業を選ぶことが多いため、「旅館・ホテル営業の基準だから関係ない」と読んでしまいがちです。そうではありません。

条例第4条(簡易宿所営業の施設の構造設備の基準)の第2号にこうあります。

前条各号(第2号を除く。)の基準に適合する構造設備であること

出典:大阪市旅館業法の施行等に関する条例(大阪市)

「前条」は第3条です。つまり簡易宿所営業は、第3条の各号を(第2号を除いて)そのまま取り込んでいます。第3条に第12号が加わったことで、鉄筋コンクリート造の要件は簡易宿所営業にも及びます。

大阪市公報の条例のあらましも、旅館・ホテル営業及び簡易宿所営業の施設の構造設備の基準等を改めると書いています。別の条文を直したからではなく、この準用の仕組みによるものです。

いつまでの申請なら、従前の基準で審査されるか

経過措置が附則に置かれています。要点は4つです。

  • 第3条と第12条の改正後の規定は、施行日(令和8年10月30日)以後に行われる申請に適用されます。施行日前に行われた申請については、なお従前の例によります
  • 施行の際に現に許可を受けて設置されている旅館業の施設を利用して、新たに旅館業を経営するために行う申請も、従前の例によります
  • 構造設備の概要その他市長が定める事項の届出を施行日前に行った施設を利用して新たに旅館業を経営するために行う申請も、従前の例によります
  • ただし、これらに当たる施設でも、施行日以後に延べ面積の増加を伴う改修を行う場合は、改正後の第3条が適用されます

3つ目が実務上は重要です。許可の申請そのものが間に合わなくても、事前の届出を施行日前に行っていれば、従前の基準で進められます。検討中の物件があるなら、どちらに該当するかを早めに確認してください。

確認すべき順番

大阪市内で旅館業を検討する場合、この順に確認すると手戻りが少なくなります。

  • その建物に、現に人が住んでいる部分があるか。あるなら構造が鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造か、または建築基準法の用途が「ホテル又は旅館」になっているか
  • 宿泊者がいる間、施設に人を置けるか。置けないなら、旅館業では成り立ちません
  • 総客室の延べ面積が200平方メートル未満か。該当するなら申請前の近隣周知が必要です
  • 建築基準法の用途変更が必要か。必要なら、その工事と検査済証の取得にかかる期間
  • 消防法令への適合。大阪市では、簡易宿所営業の許可申請などを保健所に行う際、施設が消防法令に適合していることが前提になります
  • 住宅宿泊事業法(年180日)で足りるなら、そちらも比較する。大阪市は実施区域と期間の制限を条例で定めています

窓口は大阪市 健康局 生活衛生部 生活衛生課(電話 06-6208-9981)です。条例・要綱の解釈は最終的にここで確認してください。

まとめ

  • 特区民泊は大阪市で2026年5月29日に新規受付が終了。全国の認定施設の94.8%が大阪市にありました
  • 残る選択肢は住宅宿泊事業法(年180日・区域と期間の制限あり)と旅館業法(上限なし)
  • 大阪市は特区民泊から旅館業への移行を想定して条例を改正。令和8年10月2日公布、10月30日施行
  • 居住部分がある建物では鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造に限られる(遮音測定または建築基準法の用途で代替可)
  • 宿泊者の滞在中は施設への常駐が必要。無人運営は成り立ちません
  • 近隣への事前周知の対象が200平方メートル未満へ拡大し、騒音防止と緊急時対応の周知が追加
  • 簡易宿所営業にも、条例第4条第2号の準用により同じ構造の要件がかかります
  • 施行日前の申請、または施行日前の事前届出があれば従前の基準。ただし延べ面積が増える改修をすると新基準に戻ります

本記事は2026年10月時点の情報です。条例・規則・要綱は改正されます。要綱については改正案の段階の資料を参照しているため、最終的な取り扱いは大阪市 健康局 生活衛生部 生活衛生課(06-6208-9981)で必ず確認してください。

大阪で民泊を続けるか、旅館業に移るか、別の活用に切り替えるか。建物の構造と、人を置けるかどうかで答えが変わります。判断がつかないところはお気軽にご相談ください。平均稼働率89%・630室の運営を通じて見てきた実務の観点から、確認すべき点をお伝えします。

制度ごとの違いは特区民泊とは|賃貸借契約で行う制度と新法との違いと民泊の業許可|届出・許可・認定のどれが必要かを整理でまとめています。

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